東京高等裁判所 平成元年(行コ)94号 判決
東京都世田谷区成城二丁目二三番七号
控訴人
亀山孝一
東京都世田谷区若林四丁目二二番一四号
被控訴人
世田谷税務署長
辻武保
東京都千代田区霞が関三丁目一番一号中央合同庁舎四号館
被控訴人
国税不服審判所長
杉山伸顕
被控訴人両名訴訟代理人弁護士
和田衛
被控訴人両名指定代理人
星野雅紀
同
小野雅也
被控訴人世田谷税務署長指定代理人
藤本宜之
同
郷間弘司
同
伊藤祐一
被控訴人国税不服審判所長指定代理人
渡部義信
同
中村有希郎
右当事者間の所得税更正処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は原告の負担とする。
事実
一 控訴人は、「原判決主文二、三項を取消す。被控訴人世田谷区税務署長が昭和五七年八月三一日付けでした控訴人の昭和五四年分、昭和五五年分及び昭和五六年分の所得税の更正並びに過少申告加算税の賦課決定を取り消す。被控訴人国税不服審判所長が昭和六〇年四月二日付けでした前項の各更正及び過少申告加算税の賦課決定に対する裁決を取消す(当審において右の限度に請求を減縮した。)訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら訴訟代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示中の本件処分、本件裁決の取消請求に関する部分と同一であるから、その記載を引用する。
1 控訴人の主張
本件更正は、更正通知書に理由の附記を欠いており、違法である。異議決定書または審査裁決書に十分な理由が附記されても、その違法は治癒されることはない。税務署長に対する異議申立ての制度も国税不服審判所長に対する審査請求の制度も、当初の更正処分において明らかにされた争点について審理が行われるべきであり、理由の差し替えをすることは許されないのであるから、更正通知書に理由を附記することは、納税者に対する手続的保障の原則を尊重する上で不可欠なものである。よつて、被控訴人らが行なつた本件課税処分はすべて違法であつて、取消されるべきである。
2 被控訴人らの主張
控訴人の右主張は争う。
理由
一 当審も、控訴人の本訴各請求は、これを失当として棄却すべきものと判断するが、その理由については、原判決五六枚目表一〇行目「附記がない」の次に「ことは、納税者に対する手続的保障の原則に反する」を加えるほか、原判決がその理由中の本件処分、本件裁決の取消請求に関する部分(原判決四四枚目裏四行目から六九枚目裏末行まで)において説示するところと同一であるから、これを引用する。
二 以上の次第で、控訴人の本訴各請求は、いずれもこれを失当として棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であつて、本件各控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 野崎幸雄 裁判官 関野杜滋子 裁判官篠田省二は転官のため署名押印することができない。裁判長裁判官 野崎幸雄)